野宿自転車お遍路日記:準備編1
思ったことを書き連ねる。山田先生に遍路中は写真と文章を提出しろと言われた。もうすでに遍路に行く支度は整えたので、そろそろ書き始めておこうと思う。
今日は考えることがいっぱいあって疲れてしまった。こんな調子で遍路は大丈夫なのだろうか。
野外にタープを張ってゼミをした。雨が降ると思っていたけど降らなかった。風が気持ちよかった。緑が滲んで見えるほど濃く鮮やかだった。
9月も終わる 冷えてきた
みんなで集まって雑談をした。久しぶりに集団で会話した。立場を見失う。
盛り上がるのも沈黙も苦手だ。体なんて溶けて一つになってしまえば会話なんてしなくて済むのに。
それぞれの写真を撮った。
集合写真はコラージュにするために、一人ずつポーズをとらせた。卒アル委員なので仕方がないのだけれど、こんな仕事放り出したいような少しまんざらでもないような不思議な感覚を覚える。意識すると疲れてしまうから低血圧な脳みそをさらにぼんやりとさせる。
いつの間にかプリクラを撮りに行くことになっていた。相変わらず意味がわからない。
卒業アルバムの個人写真にするのだという。
今日はいないメンバーにこのことを文言で伝える徒労を予想しながら付き添う。
ここで全員の個人写真が撮れてしまうのは都合がいいいのだけれど
帰りにバイトをしているドーナツ屋に行った。
先生に自分もいれば半額になることを耳打ちしたからだ。あの瞬間が今日一番活気があったかもしれない。
店に行くと先生はドーナツを手掴みにしてトレーに載せた。店に申し訳なくなる。
店長はレジでドーナツを落とした。取り換えに行っている間、自分から話をしてさりげなくそれを誤魔化す。
アルバイトがドーナツを打ち間違えて、それを指摘しようとするところをうやむやにして足早に店を立ち去らせる。
出口で礼を言われたが、なんだか自分のおかげで安くなったということを自慢したかっただけのような後味の悪さだけが残る。帰りたい。
遍路に行こうと思ったのはこういう感覚のためかもしれない。
大学を中退してバイトと筋トレをしている半マッチョに話をしたら旅に同行することになった。本来の目的からは逸れるが、1人で行くことのリスクを考えなくて済むのは楽だ。
卒業研究という名目で授業を休んで行くのだから、研究室にはこの事実はあまり知られたくない。
知られるにしろ、それなりの言い訳を考えてからにするつもりだ。
昔からこんな感じで、何かあるごとに両者に都合のよい情報を知らせることでその場を収めようとする癖がある。今日は疲れている。板挟みになるのは元気な時だけでいい。
はぁ
文章を書くことも疲れる。
話をしただけでは消えてしまうからこうしなければならないのだけれど。
写真を撮ることもそうだ。自分がシャッターを切りたい時に切れればそれでいい。
卒業研究のためにこれから一貫して何を撮り続ければいいのだろう。
よく分からないまま遍路の準備を進める。
逃げたいような、忘れたいような、ぼんやりとした感覚だけがずっとあるような気がした。