soubou8131’s blog

INTP-Tとのこと。無為徒食徒然大学生(二十歳)

先日、送迎にて

花火大会のアルバイトをしてからというもの、明るく活気のある人間に魅力を感じていた。

人目を憚らず爆笑するような人間は、大抵深く物事を捉えようとしない、無能な人間だと思ってきた。事実、そこまで思慮が深くない人間が多いだろうと今でも思っている。

しかし、思慮が深いだけが人間にとって果たして良いことなのだろうか。考えすぎて暗い空気を身に纏っている人間もいる。友人がそうだ。

少なからず、自分もそんな友人の影響を受けてこんな空気を纏っているのだろうか。

もう少し自分は社会に顔を出すべきなのかもしれない。そう思った。

森の中ではたくさんの木が目印になる。自分がどこにいるのか確認するためには、まずはたくさんの木を見ることだ。

 

そんなことを考えていた矢先、夜中に一本の電話がかかってきた。友達と呼ぶには少々疎遠だが、ある程度話の分かり合える女性の友人からだった。

明日の朝、母親と祖父母を駅まで送りたい。しかしタクシーは予約で埋まっていて困っている。祖父は足が悪いから車を持っている自分に送迎を頼みたい。そんな内容だった。

ただ、朝は早く5時半には家を出たいという。

花火大会も終わり、不規則な生活を送っていた自分にはこの時間に起きているというのがとても難しいものに感じられた。

結果、その友人宅で良ければ母や祖父母と共に泊まってもいいという話があったので、仕方なく甘えさせてもらった。

 

友人宅に着くとパジャマ姿Mが出てきた。Mは自宅の中に自分を招き入れると母親と祖父母を紹介してくれた。挨拶を済ませると自分は部屋の隅に腰をかけ、なるべく暗い雰囲気を漂わせないように、静かに、存在を薄くしていった。

Mの母親は電話の反対から聞こえてきたように、やはり騒がしく活気のある人だった。

自分が家に着くなりお菓子やチューハイを机の上に用意し始めると、好きな俳優のツイキャスが終わらないからとか言って、携帯を握りしめたまま風呂場に行ってしまった。

Mも陽気に見せるのが得意だったから、その母親を見て妙に納得してしまった。

その後のMと母親のやりとりを見ても、互いにそそっかしくも面白おかしいやりとりが繰り広げられた。それを見て祖父母は時折笑った。暖かい家庭を感じた。

思慮深さも話の内容も全くあってないようなものばかりであったが、ただあんな風に人が集まり笑い合う空間に、私は例え難いような感覚を覚えた。

その後、我々は早朝の出発に備えて寝ることにした。Mの賃貸には部屋が2つあったから、祖父母は隣の部屋に、私とMとMの母親はそのままこの部屋で雑魚寝をすることになった。

 

その夜はいつになく穏やかだった。

時間の流れもゆっくりと流れていくような気がした。

寝転がって壁を見つめると、常夜灯に照らされた張り紙の陰がぼんやりと揺れていた。まだ作業中のMはテレビの正面にいたため薄暗い部屋はその暗さを保ったまま、色とりどりの表情を見せた。不思議と、回る盆提灯のように色の移り変わりは穏やかで心地よかった。

 

翌朝、約束通りM一家を車に乗せて無事駅まで送り届けた。

M一家に別れの挨拶を済ませ帰ろうとすると最後、Mから手紙を受け取った。帰ったら開けてほしいとのことだった。

帰宅後、手紙を開けてみるとMの走り書きの礼を述べた文章と5000円が包んであった。

「これはM家からのお礼なので好きなものを食べたり見たりに使ってください」

してやられた!あの家族のことを思い返して顔が綻んだ。

久しぶりに暖かい気持ちになった。