久しぶりの単発バイト
大学生活も、もう3年目。どんなものでも楽しいと思えるのは2周目くらいが限度だろう。それが年単位となれば尚更。
正直、飽きてきた。
やれインターンだの、やれ就活だの。そういう時期にも差し掛かってきた。
不安を感じない訳じゃないし、何をすれば正しそうなのかだって多分なんとなく分かってる。でも、それじゃ満たされない何かがある。
きっと高校入試や大学入試なんかと一緒で、努力すればするほど本来の自分とは乖離した場所に辿り着いてしまって、苦しくなるだけだ。
ただ、このまま何もしないってのも、生き物と呼べるのかどうか怪しい。
せめて、自分から行動を起こせるだけの活力がどこかから湧いてこないものか。そうすればこの終わりのない洞窟からも抜け出せるのに。
そういえば最近、久しぶりにアルバイトをした。長岡の花火は大きいから、花火大会当日は大変混雑する。単発のバイトも手軽で高給なものが多い。
正直、花火なんてそう何回も見ても面白いものでもないし、花火大会は2日間あったから、1日目は単発のアルバイトを入れた。
そして、これが本当に久しぶりに社会と関わる機会だった。
事前の情報では駐車場整理をやらされるという話だったが、いざ行ってみるとトイレの整理係というアルバイトだった。
大会会場付近のイオンは人でごった返すため、トイレにも沢山の人が来る。それをスムーズに捌くために列の整理をする係である。
人が増えた時にはそれなりに仕事があるが、そうでない時には何もすることがない。まあ、増えてもどうせ並ばせるだけなのだから、必要な仕事などほとんど無い。せいぜい漏らしそうな子供を従業員用のトイレに誘導するくらいだ。
当日の作業員は私を含めて6,7人程度。みな初対面であった。その中には年下の子も2人いた。なんでも他にもバイトを幾つも掛け持ちしているらしい、活気のある子たちだった。
2人ともまだ高校生のような素ぶりで、持ち場を離れてはウロウロし、暇そうな自分に話しかけてきた。
そのうちの片方の子がこれといって顔が整っている訳ではないが、いい笑顔をする女の子だった。まさに怖いもの知らずの女子高生といった感じで、休憩中すれ違う見知らぬおじさんにもハイタッチを要求するさまだ。
久しぶりにこんな騒がしい人間に出会った。
しかし、こんなにも笑顔を(質が良いかどうかは置いといて)誘導する人間を見るのも本当に久しぶりだった。
ギャハギャハと軽く人を蔑称するような笑みも零しはするが、決して悪意のあるものではなかった。それを周囲も感じ取っているようだった。
実情はどうであれ、人を笑顔にすることは良いことだ。帰り際、普段なら絶対に笑わせないであろう警備員のおじさんにも悪ふざけを仕掛けて笑わせたり、置き忘れたドリンクを届けに走ってきた警備員と腹を抱えて笑ったり。
そして、自分がどうやってもその枠の中に入り込めなかった。
何か自分からは暗い瘴気のようなものが、クーラーの冷気の如く溢れ出ているように感じられた。